【あの人3】K君
親父さんは歯科技工士だと聞いたが、それ以上のプライベートなことは知らない。
専門学校のオリエンテーションの日、俺はまだ回りの連中とは馴染めず一人で教室の机に座っていた。
少し遅れて彼が俺の隣に座り、「出身はどこ?」と言うようなことから会話が始まったように思う。それから数人が加わって、何となく仲のよいグループができた。
Kを最後に見たのは、夏休みが終り授業が始まってから数日たった土曜日だった。
その日授業が終り教室を出ようとした時に彼は「いつもの茶店で待ってるからよ」と誘いをかけてきたが、別の友達と麻雀の約束があったのでその誘いを断った。
翌月曜日からKは教室に姿を見せなくなっていた。何日か授業を休むことは誰でもあることなので、その内に出てくるのだろうと思っていたが、いっこうに授業に出てくる気配は無かった。何週間かしてから、Kは学校を辞めたのだと気が付いた。
あの日Kは俺に学校を辞めるということを言おうと思い茶店に誘ったのだろう。
おそらく俺がKの話しを聞いたからといって、退学を思いとどまったとは思えないのだが、彼の最後の話しを聞いてやれなかったことをずっと後悔している。
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